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東京高等裁判所 昭和55年(行コ)119号 判決 1981年4月27日

埼玉県富士見市諏訪一丁目八番二〇号

控訴人

荒野正光

右訴訟代理人弁護士

楠本博志

埼玉県川越市三光町三六番地

被控訴人

川越税務署長

右指定代理人

石川善則

奥原満雄

神林輝夫

渡辺克己

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は「原判決を取消す。本件を浦和地方裁判所に差戻す。」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上及び法律上の陳述ならびに証拠の関係は、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する(但し、五丁表六行目及び同丁裏七行目に、それぞれ「避クコトヲ」とあるのを、「避クルコトヲ」と訂正する。)。

理由

当裁判所も、控訴人の本件訴は、法定の出訴期間経過後に提起されたものであり、かつ、控訴人は、不変期間である右出訴期間の不遵守について、これを追完することを許されないから、結局本件訴は不適法として却下を免れないものと判断するが、その理由は、左記1ないし3のほかは、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一一丁裏八行目に「なしえる」とあるのを「なしうる」と訂正する。

2  同一二丁表三行目から七行目までを全部削除し、右削除部分に、次のとおり付加する。

「そうして、本人に対して適法かつ有効に裁決書の謄本が送達されたときは、特段の事情のない限り、本人は送達を受けた日に審査請求に対する裁決があつたとこを知つたものと認めるべきであり、この理は代理人が選任された場合であつても変りはない。そうして、本件に現れたすべての証拠によるも、右段の事情を認めるに足りない。」

3  同一二丁裏八行目「し、」以下及び九行目全部を削除し、右削除部分に、次のとおり付加する。

「。なお、右のように初日を算入すべきものと解すると、裁決自体を争う取消訴訟に比して、裁決を経た原処分に対する取消訴訟の出訴期間が一日短かくなることになるが、行政事件訴訟法一四条四項は、もともと適法な審査請求をした者については、裁決を知つた日まで原処分に対する出訴期間の起算を猶予することを目的とする規定であつて、原処分に対するものと裁決に対するものとの出訴期間を一致させることを目的とするものではないと解されるから、右述のような差異を生じても、前記解釈が行政事件訴訟法一四条について不合理な不統一を結果するものとはいえない。そうして、行政事件訴訟法一四条四項のような期間計算に関する規定は極めて技術的なものであり、このような技術的な意味を持つ法令の用語は、特段の定めがない限り、すべての法令について、立法の通常の用語例に従い、同一の意味で用いられているものと解するのが相当である(本件のように、期間の計算について、法令が「‥‥から‥‥」としないで、特に「‥‥から起算する。」と規定している場合には、その日を算入することを明らかにしたものとするのが、通常の用語例なのである。)。従つて、同条項に関する前叙の解釈が、控訴人主張のように、憲法に違反するものということはできない。」

してみると、控訴人の本件訴を却下した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用は敗訴の控訴人負担として、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 川上泉 裁判官 奥村長生 裁判官福井厚士は転補のため、署名捺印することができない。裁判長裁判官 川上泉)

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